■読売新聞 2016年3月30日(水)掲載

認知症徘徊 スマホ捜索|守山市実証実験  専用アプリ 若年層への啓発必要

認知症による徘徊で高齢者が行方不明になるのを防ごうと、守山市は29日、実証実験中の見守りシステムの稼働訓練を実施した。
近距離無線通信「ブルートゥース」を活用し、高齢者が持つ小型電波発信器(ビーコン)を、周囲のスマートフォンの専用アプリで感知、居場所を特定する仕組み。 従来の全地球測位システム(GPS)端末よりも普及が期待されている。対策の最前線を取材した。

「うちのおばあちゃんがいなくなりました」「警察に届け出はしていますか」「どんな服装ですか」訓練は、同市水保町の速野会館を拠点に市職員や地元住民ら約30人が参加。 ビーコンを身に付けた職員2人が高齢者役となり、同会館に設けた仮設本部に行方不明の連絡が届くと、緊張感が漂った。
ただちに見守りシステムが起動。捜索役の職員がスマホの専用アプリを持って高齢者役に近づくと、本部にあるパソコンの地図上に居場所を示す目印が赤く点灯した。

同市は約10年前から、GPS端末を貸与する見守り活動を行ってきた。だが、「端末が大きくて不便」「週1回程度の充電を忘れる」といった声が多く、2015年度の貸与数も7人と普及しなかった。
そこで目をつけたのが、最新の近距離無線通信。ビーコンは500円硬貨大で重さも4グラムと軽く、1個で2年近く動く。約50グラムもあるGPS端末よりも持ち歩きが便利なため、 1月から認知症家族がいる5世帯にビーコンを配布し、3ヶ月の予定で実証実験を行ってきた。

市は、この日の訓練を含む実験の報告書をまとめ、来月以降の実用化を検討する。
県警によると、県内では昨年、認知症の疑いがある高齢者の捜索の届け出は112件。11年以降、毎年100件を超えている。
守山市の地域包括支援センターの池田初美所長は「スマホを使う若い世代に認知症について知ってもらうため、企業向けの啓発講座などを積極的に開く必要がある」とした上で、 「現在は市独自の取り組みだが、湖南4市、県全域と広げていきたい」と話している。

帽子や靴に小型発信器 半径45メートル内で感知

守山市が実証実験に取り組むシステムは、栗東市のIT企業「ナスカ」が国や県の補助金を得て開発した。
認知症高齢者の家族から「行方不明になった」との連絡を受けた守山市が、システム起動をナスカに依頼。
ナスカま街中にいる住民のスマホにメッセージを送信し、アプリを起動してもらう。
高齢者が半径45メートル以内にいた場合、そのスマホから位置情報がナスカに送られる。
市はパソコンで位置情報を逐次確認、入手し、警察などに伝えて、高齢者を発見、保護してもらう。

ビーコンは、高齢者が外出時に身に付ける帽子やつえ、靴などに装着する。
課題は発見の精度を上げるため、スマホにアプリを取り込む利用者増だ。ナスカによると、現在、アプリの利用者は県内を中心に約900人。
市はタクシーの運転手やコンビニエンスストアの従業員らに活用を呼びかけている。
ナスカの井上昌宏社長は「気軽に捜索に参加できることを知ってもらいたい」と語る。
専用アプリ「みつけて.net」はホームページからダウンロードできる。

参考URL:読売新聞 2016年3月30日(水)掲載 ※PDFファイルが開きます(21.2MB)

みまもり隊
滋賀ICT大賞優秀賞2017